実態にせまるシリーズ

分譲マンションの大規模修繕で談合ってあるの?裏話をご紹介します

分譲マンションの大規模修繕工事業者ってどうやって決まっているの?適正に工事業者はきまっているの?談合ってあるの?業界の実態を知りたい。

分譲マンションに入居しているとこんな疑問を持つことがあると思います。

分譲マンションの管理会社に2005年からフロントとして現在も働いている僕が大規模修繕工事の裏話を教えます。

実際に担当しているマンションの役員から聞かれることもあるんですよ(笑)

分譲マンションの大規模修繕で談合ってあるの?

分譲マンションに住んでいると12年~15年の周期で大規模修繕工事がおこなれます。

大規模修繕工事とは区分所有者が毎月支払っている修繕積立金を使い足場を立てて外壁やバルコニー等を修繕する大規模で高額な修繕工事です。

結果から言うと大規模修繕工事では談合が行われる事があります。

マンション管理会社や大規模修繕工事業者、設計会社でなければ知りえない情報ですね。

分譲マンションの一般的な大規模修繕工事の流れは以下の通りです。

・設計会社で「建物診断」を行う。

・設計会社で「工事設計」を行う。

・大規模修繕工事業者を「公募」する。

それでは、談合の裏話に進んでいきますね。

管理会社と設計会社と工事業者はつながっている

協力

大前提として管理会社と設計会社、大規模修繕工事業者は繋がっています。

管理会社が全ての設計会社や工事業者と繋がっているということではなく、管理会社には協力業者という位置づけの設計会社・工事業者がいるということです。

それって見分けることができるの?

管理会社から提案される設計会社は100%協力業者だと思って間違いないでしょう。

管理会社のフロントは出来る限り繋がりのある設計会社で大規模修繕工事の入り口である「建物診断」を実施するように促します。

これはマンション管理会社フロントに託された任務なのです。

業界にいると「建設新聞」という業界紙をみることが多いので、A管理会社の大規模修繕工事はB設計会社が行っていることが多いな。

C工事業者が工事を受注していることが多いなというのは分かります。

管理会社に複数社の見積もりを依頼すれば、繋がりのない設計会社になることはないの??

管理会社の繋がりのある設計事務所を使いたくないのであれば、必ず自分達で見積もりを取る必要があります。

なぜなら管理組合から複数社の見積もりを依頼されても、管理会社と繋がりのある設計事務所は複数社あるため、結局は管理会社の繋がりのある設計事務所になるからです。

この時点で談合と言えば談合ですね(笑)

「建物診断」を実施した時点で大規模修繕工事の筋書きは決まる

つながり一般的に大規模修繕工事をする前に「建物診断」という作業を実施します。

✔建物診断ってなに?

マンションの劣化状況を調査する業務で人間で例えると人間ドッグのようなイメージです。

医者(設計会社)が診療(建物診断)するようなもので一般的に設計会社が行います。

「建物診断」を実施する設計会社が決定した時点でつながりのある工事業者に大規模修繕工事を受注させる流れが組まれていきます。

建物診断は劣化状況を調査する業務であり管理会社からのおすすめ業者で決まることが多いです。

なぜなら管理会社からの提案される設計会社で建物診断が実施されるのが慣例となっているので管理会社とつながりのある設計会社は実績が多いからです。

そのため「建物診断」の実績が多く金額が妥当であれば管理会社から提案される設計会社で決まるというストーリになるのです。

管理会社は建物診断を協力体制にある設計会社に受注させることが重要です。

受注すると9割以上の可能性で協力体制のある工事業者に大規模修繕工事を受注させることができるからです。

「建物診断」を実施した設計会社は「工事設計」を行う可能性が9割以上

工事設計

「建物診断」が終了すると「工事設計」という作業を実施します。

✔工事設計ってなに?

マンションの劣化状況を基に大規模修繕工事の工事内容を設計する業務です。

人間で例えると診療(建物診断)で悪いところが見つかった時に治療法(工事設計)を決めるイメージで一般的には設計会社が行います。

マンションの劣化状況を基に大規模修繕工事の内容を考える業務になるため建物診断を行った設計会社がそのまま「工事設計業務」を受注することが大半です。

工事設計って必要な作業なの?複数の工事業者から修繕の提案をしてもらえばいいのでは?

理事会や総会でこういう質問は多いです。この質問に対してフロントの王道の回答があります。

複数の工事業者から見積もりをとっても工事内容が異なるので比較ができません。

見積もり金額だけで比較すると「安かろう悪かろう」になる可能性があります。

工事設計を行うことで同じ工事内容で複数社から見積もりを取ることができるため競争原理が働き適正な費用で工事を実施することができます。

この回答をすると工事設計費用をケチって大規模修繕工事を進めようという話にはならないケースが大半です。

それでは、「工事設計」が終わった後の大規模修繕工事業者の選定の話に進みますね。

形式的に大規模修繕工事業者を「公募」する。

トリック
私が住んでいるマンションでは大規模修繕工事業者は公募で決定しているから公正に業者を決定していると思うけど・・・

公募って聞くと公正って思いますよね。そこがミソなんです。公募にはトリックがあります。

✔公募ってなに?

公募とは建設新聞等で大規模修繕工事業者を募集することです。

公募をすることで同一の工事内容で複数社から見積もりをとることができるため金額の比較ができ入居者はガラス張り(ガチンコ勝負)で大規模修繕工事業者が決定されているように見えると思います。

しかし、これがトリックです。

設計会社は公募の際の条件として、「直近〇年間で100戸以上の分譲マンションの改修工事実績が〇〇棟以上あること」「過去〇年間に事故をおこしていないこと」「資本金が〇〇円以上であること」「本社・支店が〇〇にある」等、つながりのある工事業者が参加できる範囲で条件を厳しく設定します。

大多数の大規模修繕工事業者が参加できない条件且つ協力業者だけが参加できる条件を設定するイメージです。

建物診断や工事設計と同様にこのような事が繰り返されてきているので管理会社の協力業者である大規模修繕工事業者の実績は多いのです。

公募に参加してくる業者は基本的には管理会社の協力業者であり筋書きは決まっていて

本命の業者よりも高い金額で入札するだけです。

これが一般的に談合といわれるところですね。

稀に組合員で知識のある方がいて「この条件だと参加する工事業者が少なくなるので、もう少し条件を緩和した方が良い」という意見があり、条件を緩和したことでつながりのない業者が見積もりに参加してくるケースや、条件を緩和しなくてもつながりのない業者が見積もりに参加するケースがあり、設計会社の思惑に狂いが生じることがあります。

設計会社と工事業者がつながっているのは業界においては常識です。

つながりのない工事業者が大規模修繕工事を受注できる可能性は非常に低く、見積もりに要する時間が無駄になってしまうためよっぽどのことでなければ参加はしてきません。

つながりのない工事業者が参加してきた場合に設計会社が行うのは次の手法です。

見積もり提出先を設計会社にする。

資料公募の場合は見積もり提出先と見積もり期限を定めます。

この時に設計会社は「見積もり比較表の作成」や、「見積もり内容が工事設計の内容と異なっていないかを確認する」という名目で見積もり提出先を設計会社するように促します。

見積もり提出先を設計会社にすることで万が一つながりのない業者が最安値であった時につながりのある業者にそれよりも低い金額で見積もりを出しなおさせるためです。

設計会社は紹介料を貰っている。

紹介料

業界では常識ですが工事設計会社は大規模修繕工事業者から紹介料を貰っています。

正確にはわからないですがおそらく工事費の3%~5%程度だと思います。

また、大規模修繕工事の際に使う塗料などの材料メーカーからも紹介料のような物があると聞いたことがあります。

設計会社の本音

設計会社がつながりのある大規模修繕工事業者に工事を受注させるのは紹介料を得るという側面が大きいのですが大規模修繕工事を問題なく完了させるために指示・指導がしやすいという側面もあります。

大規模修繕工事業者は管理会社や設計会社のおかげで工事を受注できているため多少のことは融通をきかせて対応するためこれは管理組合側のメリットでもあります。

設計会社と大規模修繕工事業者の関係性が全くなければ工事で不具合があった時に設計会社と大規模修繕工事業者の責任のなすりつけあいが始まる可能性があり管理組合にメリットはありません。

逆に関係性があると設計会社の設計に問題があった場合でも軽微なことであれば大規模修繕工事業者はそれを飲み込んで工事の手直し等を無償で行います。

管理会社は大規模修繕工事で利益はないの?

自社で建物診断や大規模修繕工事を実施している管理会社であれば受注できなければ基本的に利益はありません。

自社で建物診断や大規模修繕工事を実施しない管理会社は設計会社と工事業者から紹介料(大規模修繕工事費の5%~10%)を得ているのが現状です。

最後に

これがマンション大規模修繕工事の裏側です。

良い悪いということではなく大規模修繕工事の裏側をご紹介しました。

管理組合宛てに大規模修繕工事業者のちらしが届くことは殆どないですが工事設計会社のマンション修繕無料セミナー等のちらしがよく届く理由がわかったでしょうか。

大規模修繕工事の入り口は建物診断だからですよ。